コラム

フェルメンテーション談義(アルコール発酵とMLF)〜深川ワイナリーの醸造家「上野さん」と大いに語る!

みなさんこんにちは。ワインライフナビゲーターのNORIZOです。
最近WSET資格に向けての勉強が本格化し、知識が日々ディープな方向に向かっているのを楽しんでいる今日この頃です(笑。

そんな中、今回のコラムのテーマは『ワインのフェルメンテーション(発酵)』について、です。

ここ最近、この内容について毎日疑問質問が湧いてきてしまい、どうしても醸造家の方に直接をお話を聞きたくなっちゃいました(汗。
そこで、いつもよくしていただいている東京のワイナリー『深川ワイナリー』の醸造家、上野さんにお会いしに行き、お話しを伺うことに。
その時のお話も交えていろいろ考えてみたいと思います。

 

アルコール発酵について考えてみた!

みなさんご存知のとおり、ワインには2つの発酵がありますよね。

ワインの発酵の種類

①アルコール発酵

②マロラクティック発酵(MLF)

 

まずは第一番目のアルコール発酵の話題から。

そもそもアルコール発酵は、酵母がブドウのグルコースを食べることで起きますよね。
絵にするとこんなイメージ。
で、そもそも『食べる』って何よ? 酵母って生き物? 見える? どこにいる?
などということがめちゃ気になり出したわけです。

 

酵母の種類について

酵母には、天然酵母と培養酵母があります。読んで字の如く、自然界に存在しているものと、人工的に作り出したものです。

自然界にあるものって、空気中とかにいて、いわゆる酒蔵の「蔵付き酵母」みたいな話なの?
と思いきや、ワインの場合は、ブドウの果皮の表面についている『蝋粉』と呼ばれるサラサラしたパウダー状の部分に、天然酵母が住んでいるということでした。

天然と聞くとなんだかカラダによさそうで、そっちの方がいいような気がするため、培養酵母はダメなのでしょうか?

上野さん曰く、培養酵母にもいいところがあるそう。それは、
・香りのコントロールが効く:華やかな香りが出る / 好みの香りが出る / きれいにスッキリした辛口になってくれる
という部分だそう。

しかし、上野さんはできるだけ天然酵母に拘りたいと言う。

天然酵母による自然発酵の方が、より複雑な香りが出るから!
さらに、人工的な酵母を何も加えないというこは、「先が読めない」ということとで同義で、だから『どうなるかわからない楽しさがある』

『このワクワク感が堪らないんだよねー』と笑って語ってくれた上野さん。

最近の事例としては、山形産のシャルドネを天然酵母を使うことで、ラ・フランス系の香りが引き出せて、華やかでバター香を感じる仕上がりになったそう。
そのような複雑味を増す感じが天然酵母の魅力だそうです。

ちなみに酵母は顕微鏡で見えるんだって(驚!

 

 

アルコール発酵を止める?

上述のように、酵母によってアルコール発酵が起きることはしっかり理解できました。

でもですよ、

さらに、アルコールバンバンできて、アルコール度数バンバン上がっちゃうじゃん。
・アルコール発酵を止めるにはどうするの? 
ってことも気になり出しちゃった。

そんなこんなを、前述の上野さんにお聞きしたところをまとめると、以下の手法がポピュラーだそうだ。

アルコール発酵をSTOPするには

酵母の働きを止めればよいのだ!

・高温にする(55度以上)にする

・亜硫酸(SO2)を添加する

ちなみに上野さん、アルコール発酵については、以前こんなご経験も。
ある日、上野さんが造ったワインの出荷先から、

上野さん、あんたのワイン、コルクが上がってきてるよー(驚。
発酵が止まってないじゃん!

というエピソードが飛び出した。現場で活躍されていらっしゃる方ならではの、経験に裏打ちされたお話は面白い。

 

お次はマロラクティック発酵(MLF)

アルコール発酵が終わると、引き続きマロラクティック発酵が始まります。亜硫酸が少なくなった時点で、乳酸菌がモゾモゾしだすという。

 

マロラクティック発酵についてはこんな感じのイメージ。

 

赤ワインの全てではないですが、このMFLを行っているものもあります。

リンゴ酸を柔らかくするのに加えて、アロマや質感もリッチで豊かな方向に変化する可能性があるからです。
バター感、チーズ感、クリーム感などは、このMLFのテクスチャーの代表格だと言えます。

中にはリンゴ酸と酒石酸を、ほーんの微量だけ加えるワイナリーさんもあるそう。(ルール的にはスレスレです...汗)
タンクの洗浄にも使われたりもするんだそう。

 

乳酸菌はどこにいるの?

上述のアルコール発酵同様、MFLも乳酸菌によるものですが、その菌はどこにいるの?

空気中にいるもの、樽についているもの、"乳酸菌スターター"という人工的なものを投入、などなど諸説あるそうです。

ちなみに、上野さんは自然に任せた乳酸発酵を好まれているので、「スターターは使わない主義」なんだそう。

 

MFLもガスが発生する

MLFもアルコール発酵同様に、若干の炭酸ガスが発生します。

この部分について上野さんは、『昔、瓶内MFによるスパークリングに挑戦したんですよ!』と語り出した。
ようするに、瓶内二次発酵の乳酸菌版をやってみようという発想。

聞いているだけで、ワクワクするではないですか!
『ラベルもそのまま"MFL"』と話は続く。

それでそれで? どうなったの?
『そこまでブクブクスパークリングにはなりませんでした(笑』
と笑う上野さん。

MFLで瓶内発酵だなんて、マニアには堪まらない発想ですな!

 

フェルメンテーションはどこまでも

上述の流れから、その後もタンク温度管理や亜硫酸の話にひたすら花が咲きました。
こちらに書ききれないほどの、一般消費者にはどーでもいい話に、ワイン馬鹿のNORIZOは大はしゃぎで盛り上がりました!

上野さん、どうもありがとうございました!

上野さん

 

これまでいろいろな醸造家の方とお話ししていますが、皆さんそれぞれの哲学や好みがあって、そこに優劣はないと感じています。
皆さん全員が、お客様が「おいしいと感じてくれるワイン」を目指して、でも自身の個性も入れて、という、先はどうなるかわからないワインと向き合っていらっしゃる姿に、飲みてとしてもっと理解を深めなければなぁ、と強く思ったのでした!

-コラム
-, ,